その者は若い頃、そこら一体を荒らしまわる荒くれ者たちの中に居て、一際人目を引く赤い髪を有していた。
『アレク!』
その言葉に、男は振り仰いだ。
『アレク、もうやめて!』
その男の腕に飛びついたのは、うす桜色の髪に、赤い瞳の女性。
『何だ、カミラ。うるせぇ、俺の邪魔をするなら、お前でも容赦しねぇぜ』
自身の腕にまとわりつく女――カミラ・チャン。彼女を振り解き、猛る声で言い放った。
『キャッ』振りほどかれた拍子に、地面に叩きつけられ、しりもちをつく。
『な、何をするのよ!アレク!』
非難めいた声と瞳が、アレクを射抜く。
『言ったろう?お前でも容赦しねぇとな』
『なんてこと、お腹の子に何かあったら!』
彼女は、その身にアレクの子を宿していた。勿論、アレクもそんなことは知っていた。
『そん時は、そいつに寿命がなかっただけの話だ』
『なんてこというの?!』
カミラは信じられないと目を見張った。
自分たちの子供がどうなろうと、関係ない。そんな身勝手なアレクの言動、行動にいいようのない怒りを覚える。
『解った、もう貴方に何も言わないわ。勝手にして』
カミラはアレクに背を向けると、そのまま立ち去る。
『ふん、勝手にしやがれ』
鼻を鳴らし、仁王立ちする男は、どう見ても先ほどの獅子然とした男には見えない。
初代朱雀、アレキサンドライト=リーの話。まだ朱雀になる前。
カミラ=チャンはアレクの妻です。
かなり途中。ツイッターで速攻作ったやつです。